YOHEI ICHIMURA










愛おしさという美しさ
そのきらめき、世界の

2023.5.6




語れないものの雄弁さ
語らないことの雄弁さ
時空間と認識の調和

平家納経見返

2022.9.17




聞こえない音に耳をすまし、
見えない光を捉えるような

2022.5.1




言葉にした途端に誤るもの
言葉という器では溢れてしまうもの
それゆえ言挙げしないのか
そもそも口をつぐむことしかできないのか
その豊かさを身に添わせるには

2019.11.3




わびとは、無垢さを取り戻すためのわざか
とすれば、その無垢さをまとった姿が幽玄か

それは
所有しないことの青さ
所有できないことの青さ

行き過ぎては失うもの


三月、 辰の月
春の、青春のただ中

2019.3.9




和歌の「なさ」

和歌の無内容さは
内容など賢しらにすぎないのだと、
ただ流れがあり
その風のようなものに撫でられながら
流されてゆくだけなのだと、
そういう無執着とも思える手振りしか
この国では用をなさないのだと、
あるいは、用をなさなかったのだと、
静かに語っているかのように思われる

「なさ」というかたちは、
そのような在りかたへの
手ごたえによって支えられ現れたものだったのだろうか
とすれば、その手ごたえを失ったとき
「なさ」というかたちの透き通った豊饒さもまた失せるのか

空しくなったとき自ずから満ちてくる何か
空しくならなければ出会えない何か


2018.9.9




侘びしい土地では、人のこころが傾きやすく、
その乾いたこころは、どこか過剰さを求める。

「ない」ということの、清らかさも円かさ大らかさも
豊満な大地に抱かれてはじめて意を成すものに思われる。


2018.7.11




万葉の清潔さ
古今のまあるい澄明さ

その移調は人の感度の、感性の、衰退というよりは
感性を守るための型の創造のように思われる

瑞々しさを守るための型という殻

2018.5.7




つくる ではなく なる
うむ ではなく なる

自然になりゆくもの
自然になりゆくこと

その厳かさ

2018.4.10




限りなく近づく
そのために遠ざかること

その手振りが「千早ぶり」か

その手振りでなければ、現れないなにか

2018.2.4




源氏物語 所感

もののあはれとは、やまとだましいとは
知性を伴った優しさ、おおらかさ、残酷さのようなものか。
それはこの国の豊かな風土が育んだ、
民草の心性であり、性(さが)なのだろう。

源氏の美しさは、その性を高次に昇華した美しさと思う。
それは、紫式部という人の透き通った目の美しさでもある。

宣長はもののあはれは見えても、
彼自身の底に横たわったからごころは見えなかったのだろうか
からごころが彼を守っていたことまでは見えなかったのか
日本人はもののあはれに生きればこそ、
その病みやすさをしればこそ、
それを癒すものを探し求めてきたのだろう

もののあはれの毒は、からごころになれば消えるのかというとそうではないだろう。
なぜならそれは豊かさでもあるからだ
豊かさを包み込む清けさ
清らかさを芯とした豊かさ
それが形としてみればこの国の幸福論でないか

2017.11.1




形式ということ

秘めるとは守るということか
秘することが花なのではない
内に秘めなければ
花とはならない何か

それは表に現れるにはあまりに脆いが
それでいて核心なのだ

たとえば民謡の
その声のうぶさ

2017.10.20